NO GOOD PEOPLES

仕事が出来ない

伊豆ロングトレイル(御瀬崎から下田まで)

f:id:DHFclub:20230529125121j:image

GWを使って伊豆の海沿いをぐるっと半周した。御瀬崎から下田まで。このコースに正式な名称は無いようで、皆が好きな名前で呼んでいる。西伊豆西伊豆遊歩道、ジオパークの標識を頼りに進み、南伊豆ではジオパークの標識のみを頼りに進んでいく。車道を歩くことも多く、明確な地図もコースもない。登山というよりはお散歩に近いが、お散歩ほど甘いコースでもない。装備は登山の装備が求められるし、体力と脚力が何よりも必要でもある。諦める気持ちも重要で、無理をしないピースなハイキングを心掛ける。

1日目 沼津駅から御瀬崎まで

f:id:DHFclub:20230529125153j:image
f:id:DHFclub:20230529125156j:image
f:id:DHFclub:20230529125159j:image

沼津駅からタクシーで御瀬崎まで移動して旅が始まる。タタクシーの運転手さんが幸運を呼ぶストラップをくれる。これでもう今回のハイキングは勝ちが決まったようなもの。途中途中で勝手に止まって記念写真を撮ってくれるドライバー。途中でオレンジや金柑を買ってもらう。タクシーの窓からは晴れ渡った空と海、奥に富士山が見える。曲がりくねっている海岸線だから、消えて現れてまた消える。ただずっとそこにある。

御瀬崎から簡単な遊歩道に入り、裏山のような低山をのぼる。浜風が身体を冷やしてくれて気持ちが良い。ずっとこういう時間が続けばいいのにと思う。歩きにきたはずなのに、歩かない時間の豊かさを感じる。海岸線の木道の上に設置されたベンチに座り、海を眺めて昼食用のパンを齧る。煙草を吸って地図を見る。もうずっとここでいいと思う。空と海と山はどこにでもある。どこにでもあるのにここがいいと思う。遊歩道を歩く。あくまでも遊歩道というところが良い。登山道でもない遊歩道。遊びながら歩く道。こんなに素敵な響きがあるのだろうか。途中途中で山に登り、下って海に出る。その繰り返しで1日が終わる。

2日目 土肥から松崎海岸まで

f:id:DHFclub:20230529125251j:image
f:id:DHFclub:20230529125244j:image
f:id:DHFclub:20230529125241j:image
f:id:DHFclub:20230529125247j:image

街の中を歩きながら山に入って行く区間。街では時々人がいるけど遊歩道の中では人に合わない。黄金岬で馬ロックを見るために寄り道。馬に見える。最初に岩を馬に見えると発見した人興奮しただろうな。あの岩、馬に見えるぞといって、その後に周りがどんどんムーブメントの波が発生して盛り上がっっていく感じ、怖いだろうな。みんなが思うほどかなとか途中で思っても今更何も言い出せない。それが今では馬ロック。クールだ。馬ロックはトレイル上から離れて寄り道をすることになる。途中にお花畑という場所がある。どこがお花畑なのかまるで分からない。長いトンネルと交通量の多い舗装路に飽きたからバスに乗って、次の港町まで移動する。歩いている速度で観る街や自然もいいけれど、バスの車窓から眺める景色も良い。山の中のトンネルに入って、しばらく暗闇でトンネルから出た瞬間に光が目の中に流れ込んでくる。広い海が急に広がり、少し行くと街の景色へと変わる。歩く速度では感じる事のできないドラマチックな変化に魅了される。涼しいし疲れない、安いし楽しい。バスは最高だから、バスはうまく積極的に使うべきだ。歩いた人が凄いのではなくて、楽しめた人が凄い。ここはトレイルじゃなくて遊歩道の延長線だから、先ずは楽しむべきだ。ロード歩きに飽きたと思ったらバスに乗って、そこで浮いた時間で海を眺めたりすればいい。なにをしたって自由。

3日目 松崎港から小浦海岸

f:id:DHFclub:20230529125353j:image
f:id:DHFclub:20230529125346j:image
f:id:DHFclub:20230529125403j:image
f:id:DHFclub:20230529125356j:image
f:id:DHFclub:20230529125400j:image
f:id:DHFclub:20230529125349j:image

ロードは歩きは車の往来もあって、森の中とは別の気を使う。ただ早朝のロードはそれほど悪いものでもない。まだみんなが活動する前の静かな道路に、早朝の靄がかった空。ほとんど車が通らない道路は排気された臭いも、音も振動もない。

トレイルを抜けて千貫門。海岸まで降りて、その複雑な形態に圧倒される。とにかく風が強く、波の大きい海の中で聳え立つ巨大な岩。たったそれだけの事なのに、心が震えてしまう。3日目にもなると、予定行程とのギャップが出てきたり、ルートファンディングの失敗が発生したりする。少なからず焦りみたいなものや、ルートファンディングを私に任せきりになっている状態に少し苛立ちを覚えたりもする。それが一気に吹き飛ぶデカい岩。波の高い海に、デカい岩、晴天の青空をぼーっと眺めるとそんな事どうでもいいなと思える。何しに来たんですか。焦りに来たんですか、苛立ちにきたんですか。全く全然そんな事はない。私たちはただ遊びに来ただけである。本来の目的を見失うな。目的はどうでも良いのだ。楽しい事がしたいだけなのだ。聖なるプラネットアースからのメッセージを受取り私は元気になる。ピースとラブとバスが大事。

最終日 小浦海岸から下田まで

f:id:DHFclub:20230529125822j:image
f:id:DHFclub:20230529125833j:image
f:id:DHFclub:20230529125840j:image
f:id:DHFclub:20230529125829j:image
f:id:DHFclub:20230529125818j:image
f:id:DHFclub:20230529125837j:image
f:id:DHFclub:20230529125825j:image

ぱらぱらと小雨降らせる雲が、海側からの風に流されて行く。早朝の誰もいないコンクリート舗装路に雨が降り、コンクリート酸性雨が反応した所謂雨の匂いが充満する。トレイル入ってしまえば樹冠が私たちの傘になり、快適に歩くことが出来る。気持ちの良い山の中のトレイルを歩き、ジオスポットである千畳敷に向かう。

この世の果てのような景色で、明らかに生命を繁栄させるのには向いていない場所で根を下ろした植物を見る。力をもらうとかそういうわけではない。ただそういう生き方を選んだ植物もいるという事実を覚えておく。いつかきっと自分の中で事実が何かに変わる。

千畳敷からは本来であれば下田をゴールに設定していたのだけれど、どうにもこうにも完全に時間が無理なので、トレイルセンターをゴールに変更。そこからバスで下田まで行き安いホテルに泊まって温泉に入り、下田の町で夕食を食べてたっぷりと眠る。下田で入った居酒屋でロデオクラウンのTシャツを来た怖い感じの男性が5000円で伊勢海老の味噌汁を作ってくれって大将に頼んでいてクールだった。これで今回の長距離散歩はお終いである。

振り返ると伊豆半島は本当に素晴らしいところだった。鈍行で行けば家から2000円くらいで沼津に着いてしまう。その距離感でこの豊かさ。長野や山梨素晴らしいのは当たり前なんだけれど今年はシティも含めて静岡をもっとがっつり掘ってみたい。伊豆半島トレイルは本当に素晴らしいトレイルで、道が踏まれていない部分もいくつかあったので出来れば多くの人に歩いて欲しい。伊豆トレイルをこれから歩く人に向けてのテキストは別で書こうかと思います。