NO GOOD PEOPLES

仕事が出来ない

口から白い棒を

猫の譲渡会に行き、帰り道に散歩をした。私はコーラ、彼女はチェリーのチュッパチャプスを舐めながら知らない道を歩いた。歩道の生垣に生えている花を持ってきた図鑑で調べながら歩いたのだけど、途中からグーグルレンズで検索して調べた花の名前を図鑑で索引から探すというなんとも言えない作業に変わっていった。焼肉屋の前を通ると排気口から焼き肉の美味しそうな匂いがして、私が焼き肉の匂いでチュッパチャプスを舐める仕草をすると、彼女は笑いながらさすがに理解が追いつかないと言った。チュッパチャプスを最後まで噛まずに舐める人は幸せになれるという彼女の持論があって、神に祈る神聖な行為のように彼女は口から白い棒を出していた。私は彼女のその根拠のない持論を必ず証明しなければならないのだけれど、初手でチュッパチャプスを噛み砕く私の方が彼女のおかげで幸福で、私以上の幸福を誰かに与えるという事の困難さに狼狽える。