NO GOOD PEOPLES

仕事が出来ない

それは弾丸になったかもしれない

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仕事を終えて家に帰る電車。私は先週足を怪我してしまい、膝を包帯でぐるぐる巻きにしているので、それが簡易的なギブスのようになり、足があまり曲がらない。曲がらない足は直線で、 とても邪魔で、一応優先席の端っこの席に座って、立っている人の邪魔にならないようにしているのだけれど、どうあがいても邪魔なものは邪魔だと思う。
片足だけを伸ばしてすわる私の前に立ったおじさんは、私の足が邪魔だったようで、おじさんの革靴で私の足を軽く蹴ってくる。こいつキメてるのかよと思って、私はおじさんを見上げて「痛いからやめろよ。勝手に人に触ってくんな」と言って、いつもボアズが出てくる前に読むのを止めてしまうタイタンの妖女に視線を戻す。 その後は平穏。おじさんはミスをして、私は注意をした。 おじさんは気付いて、私は許した。みんな言えばちゃんとわかる。この世に暴力なんていらない。大多数のラップをしている人と、 格闘技をやっている人、ピカピカのアルファードに乗っている小太りのおじさんはそれだけで罪。警察に権力を。
そのような事を思っていたところ、おじさんの下車駅に電車がついたようで、下りようとするおじさん。乗車口までの経路上にいる別のおじさんの荷物を蹴り飛ばし、蹴り飛ばされたおじさんからローキックを受けるおじさん。ローキックを受けてすぐに、おじさんの顔面に向けてぷくぷくの拳を低速で繰り出すおじさん。よけられないおじさん。飛ぶおじさんの眼鏡。Jinsのエアフレーム。 軽くて頑丈。次世代の眼鏡。

 

私は空中を浮遊する眼鏡を見て、ああこのおじさんをここまで追いつめてしまったのは私だと。おじさんの放つぷくぷく低速パンチは私だと。私が向けたおじさんへのまなざしが、おじさんから別のおじさんへのまなざしへと変容して、時と場所が異なれば、それは弾丸になったかもしれない。ウェブ上の誹謗中傷になったの かもしれない。私の不必要なまなざしが、弾丸になり、だれかの命を奪うかもしれない。

そう思うと途端に怖くなった私は、 6時半過ぎに足早に家に帰り、友人と近所のおいしいラーメン屋に行き、ラーメン・餃子・半チャーセットを食べ、レモンサワーを飲み、足早に家に帰り、最近はまっているソーダの中にバニラが入っている棒状のアイスを食べ、 友人とyoutubeを見て、お風呂に入り、ビールを飲み、12時過ぎに足早にベッドルームに逃げ込み、寝ました。 この世の全ての悲しみが、いつかの幸せの糧となりますようにと願いながら。